その抜歯診断は適切なのか?
右下7番目の歯(第2大臼歯)は「保存困難で抜歯が必要」と診断され、親知らず(智歯)移植を希望されて来院された患者様です。CT検査にて精査を行った結果、慎重に治療方針を検討したところ、直ちに抜歯・移植を行うのではなく、まずは根管治療による保存可能性を追求できると判断いたしました。その結果、右下7番目の歯は抜歯を回避し、保存することができました。また、隣接していた横向きの親知らず(水平埋伏智歯)については、将来的な悪影響を考慮して抜歯を実施し、良好な経過を得ております。
今回の患者様は、当院ホームページをご覧になり、遠方よりご来院くださいました。
右下奥歯(右下7番)の痛みと歯ぐきの腫れを主訴に近医を受診されたところ、「保存は難しく、抜歯が必要」と説明を受け、大変不安な思いをされていたそうです。
初診時、右下7番の頬側の歯ぐきには膿瘍(膿の袋)が形成されておりました。パノラマX線写真では、右下7番の根の先に大きな透過像(骨が溶けて黒く見える部分)を認め、根尖性歯周炎が疑われました。また、その後方には水平埋伏した親知らず(智歯)も認められました。

さらにCT撮影を行い、病態を詳しく確認しました。
右下7番は「樋状根(といじょうこん)」と呼ばれる特殊な形態の歯根であり、一般的に根管治療での治癒が難しいとされるケースです。しかし、CT上では頬側・舌側ともに骨の状態は比較的良好で、患者様もまだお若かったため、まずは歯を残す方向で根管治療を試みる価値があると判断いたしました。

患者様は、「もし歯を残せなかった場合には、親知らずを移植したい」という強いご希望をお持ちでした。より精密な治療を行うためにマイクロスコープを用いた精密根管治療の専門歯科医院へご紹介させて頂くこともご提案いたしましたが、「まずは当院で治療を受けたい」とご希望され、根管治療を開始いたしました。

治療を継続していく中で、歯ぐきの腫れや膿瘍は徐々に消失し、症状も安定したため、最終的に根管充填を実施いたしました。

根管充填後のCTでも状態を確認し、良好な経過を認めました。

その後、右下7番を長期的に安定させるため、後方に存在していた水平埋伏智歯の抜歯を行いました。親知らずを残したままにすると、歯周ポケットから細菌感染を起こし、せっかく保存できた右下7番に、再び悪影響を及ぼす可能性があるためです。

右下の親知らずの抜歯後は、右下7番の補綴治療(被せ物治療)へ移行しました。なお、右上の親知らずについては、抜歯を勧めさせて頂きましたが、将来的に移植が必要となった際に利用できる可能性を考慮し、保存しておきたいと患者様がご希望されました。

また、左下にも水平埋伏智歯が残存しており、将来的な炎症リスクが考えられたため、こちらも抜歯を行いました。

そして約1年半後、経過確認のためCT撮影を実施いたしました。
初診時に認められた右下7番の根尖部の透過像はほぼ消失し、さらに右下の親知らずの抜歯部位にも十分な骨の再生を認め、非常に良好な治癒経過を得ることができました。

根管治療のみ、あるいは親知らずの抜歯のみを行う専門性の高い医療機関は多く存在します。しかし、保存困難と診断された歯に対し、根管治療・口腔外科治療・将来的な移植の可能性まで含めて総合的に治療計画を立案できる歯科医院は、まだ多くないのではないかと思います。
患者様にも大変ご満足いただくことができ、院長としても非常に安心いたしました。今後も、できる限りご自身の歯を残すことを大切にしながら、一人ひとりに適した治療をご提案してまいります。

